7年間で資産65万円から12億円へ!【前編】| : 株のことならカブドットコム証券 http://kabu.com/info/2013/interview_1030.asp#1_03
■世の中に開示されて誰でも知ることができる情報をしっかり分析していく
田中:
では、具体的な五月さんの取引手法について伺いたいと思います。ズバリ、どのようにして銘柄を選定しているのですか?やはり銘柄のスクリーニングから?
五月:
いえ、意外に思われることが多いのですが、僕はスクリーリングはしないんです。2つ方法がありまして、ひとつは一社一社ひたすら決算短信を見て、その中で変化を見つける方法です。世の中に出ていない情報を無理に探すのではなく、開示されて誰でも知ることができる情報をしっかり分析していく。見続けていくと、よく目を凝らさなければ分からないところが見えてくるんです。それがいつマーケットに認識されて株価に反映されるのかは分からないので、半分見えかかっているくらいのところが一番おいしいと思います。僕の好きな相場格言に「いつ起こるのかを予想するのは、何が起こるかを予想するよりもはるかに難しい」というものがあります。まさにその通りで、いつか上がりますとは誰でも言えますが、いつ上がるのかを当てなければリターンは生まれない。「これは」という情報が株価に盛り込まれるタイミングを捉えるためにも、変化に敏感になる必要があると思います。
ふたつ目は、世の中の流れにうまくはまる出来事や企業を探して、見つけたらその周辺にも見る目を広げていくという方法です。例えば、先日オリンピック招致が決定したとき。7年後のオリンピック開催に合わせて、一生に一度あるかないかの出来事を自分の子供と一緒に見たいと思う人は多いはずだと思いました。今から結婚して子供を生んだら、子供は4-5歳で物心がつくころです。そこで、婚活やブライダルの銘柄がいいのではないかと考えました。
田中:五月さんと言えば、個人投資家時代は株価が10倍、20倍になっていく銘柄を多く見つけてネットやメディアから注目されてきましたが・・・
五月:
株価が10倍、20倍になったということは、どれだけ安く買えて、その後どれだか高く売れたかということです。それはその時々の相場環境にかなり左右されます。現在のように割と資金が入っていてマーケットが好調な時だと、そこまで割安な銘柄は見つからないんです。その状態で買って、10倍、20倍を狙うのはなかなか難しい。だから、株価が○倍になりましたというのはこだわる必要はなく、そこはその時の相場環境という運の要素が強いと思います。その上で、大きく利益を狙うには、時代の流れに乗れているかどうかが重要だと思います。
田中:
五月さんの投資手法として、時価総額の水準が訂正されるところを狙うと伺ったのですが。
五月:
去年まではそうでしたね。時価総額100億円未満の割安な銘柄を取引していました。ただ、時価総額100億円未満で良い銘柄は去年までたくさんあったのですが、今年は相場全体の水準が上がったので、過去と同じようにはいかなくなりました。やはり、これも市場環境に左右されるところが大きいですね。今は時価総額での選別はできないと思います。
田中:
最近、五月さんがうまく時代に乗っていると思われる業種はありますか?
五月:
去年から注目していたのはインターネット広告のセクターですね。スマートフォンというハードがこれだけ普及したら、今度はその中で情報を提供するソフトで稼ぐ企業が出てくるだろうなと思っていました。それはeコマースであったり、ソーシャルゲームであったりいろいろありますが、どこがヒットしようとも、インターネット広告はネットビジネスを成功させるためのインフラみたいなもので、どこの企業も欠かすことはできない。そこでポートフォリオの基盤にしようと考えていました。
田中:
11月5日から信用空売り規制が改正されましたが、市場では需給の変化が起こるのかが注目されています。今年1月の信用取引の制度改正も流動性の面で大きなインパクトとなりましたが、空売り規制改正も市場にインパクトを与えると思いますか?
五月:
空売りの価格規制が導入された2002年は、まだネット証券も顧客が少ない時代でした。オンライントレードで数億円を稼ぐトレーダーが登場したのも2000年代。今ネット証券で取引している人のほとんどが、最初から空売り規制がある相場で育って来たんです。そうなると空売り規制改正は初めての経験となりますから、未知のインパクトがある可能性はあると思います。また、来年から税制が変わるタイミングでもあり、動きが鈍くなってきた銘柄については一旦年内に手仕舞おうかなという気持ちに傾きやすい。そのタイミングに空売り規制改正がぶつかるので、変に噛み合って波乱が起こるのではないかと思います。具体的には、今年初めに盛り上がった低位株に対する影響が大きいと思います。株価が200円や300円の銘柄は板がすごく厚いので、50単位までの空売りにはほとんど影響力がなかった。今後はそこに100万株単位でも空売りができるようになるので、与える影響は大きくなるのではないでしょうか。 ただ、買い方と売り方がフェアになるということは言えます。今年から信用取引のルールが変わって回転売買ができるようになって、買い方のパワーが圧倒的に強かった。売り方は空売り規制で不利な状態でしたからね。それが空売り規制の改正で買い方と売り方がフェアになれば、売買のボリュームが上がっておもしろい動きをすると見ています。
田中:
年初から始まったアベノミクス相場も一服しましたが、来年からNISAがスタートすることもあり、これから株式投資をしてみたいという方も多くいらっしゃいます。ズバリ、投資に向いている人ってどのような人だと思いますか?
五月:
自分の判断を「間違った」と思ったときに、素直に受け入れられる人ではないでしょうか。どんなに上手な人でも、全てを当てることは不可能ですから。ここで受け入れられない、つまり株を売却できない人は、資金が拘束されて次の銘柄に移ることもできません。取引のチャンスもなくなります。
田中:
最後に、個人投資家の方へアドバイスをお願いします。
五月:
短期の結果にこだわらず、投資を通じて学んでいく姿勢を大切にしてほしいです。後はテーマ株や市場の雰囲気で盛り上がっているものに惑わされずに、企業そのものの良さや長期的な目線で成長するかを見極めることが大事だと思います。