台本①~秋津礼~
台本作成:森山わん太郎(@MoriyamaWantaro)
レイ父「良いな? レイ。華族・秋津家の一員として誇り高く生きよ……だ。何があっても、秋津家の一員である事を忘れるなよ」(過去の断片1)
レイ兄「大丈夫だ。私は必ず帰ってくる。だからそれまで、母さんをよろしくな」(過去の断片2)
レイ母「どうして……どうしてあの人が、あの子たちが――」(過去の断片3)
レイ 「……はっ! はっ……はっ……はっ……は、ぁ……夢、か……いつの間に眠ってしまっていたのだろう。今は……最後に時計を見てから十分後か。そう時間の経って居なかった事は幸いだった。こんな小さな町でも、やる事だけはしっかりあるのだからな。眠っている時間すらも惜しい。それに――居眠りなどしていては、秋津家を再興させるのもままならん。秋津の一員として……こんな体たらくでは――」
職員 「――失礼します。町長、少しばかりお時間よろしいでしょうか。何度も断ったのですが、それでもどうしても町長と話がしたい。話が出来るまで帰らない、と言うものが居るのですが……」
レイ 「――チッ。誰だこんな忙しい時に……仕方が無いな……」(独り言)
レイ 「分かりました。ほんの少しの時間でいいなら話を聞く、と伝えて下さい」
職員 「……本当によろしいのですか?」
レイ 「勿体ぶりますね……何かマズい理由でも?」
職員 「えぇ、まぁ……それが――」
異界人「町長さん!!!」
レイ 「チッ! 貴様どこから入り込んだ! ここは異界人如きが踏み入れていい場所では――」
職員 「玄関先で待っているように言ったじゃあないですか! す、すみません町長……これがつい先ほどお話したモノです」
レイ 「なんだと……!?」
異界人「すみません町長さん! アナタが僕たちの事が嫌いなのもよく知っています! けれどどうしてもアナタでないと叶えられない願いがあってお願いに来ました……! 勿論、お話が終わりましたら直ぐに帰ります! だから――」
レイ 「黙れ! 馴れ馴れしい! 頭の狂った奇妄風情が、図々しくも上がり込んで『お願い』だと? ハッ! 随分と偉くなったものだな? 大方、共存派の連中の言葉を鵜呑みにでもして己が俺たちと対等だのと勘違いでもしたのだろうが、貴様らをこの町に置いてやっているのは人手と労働力が少ないからだ。それさえなければ、貴様らの様な奇妄など全て駆除してやっているんだぞ? 分かっているのか」
異界人「み、皆さんは悪くないです! 本当に、本当に僕だけのわがままなのです。けれど僕、どうしても学校に通って勉学を修めたいのです!」
レイ 「学校だと?」
異界人「僕どうしても学校の先生になりたいのです! その為には学校に通わなければなりません。けれども僕は、学校に通った事も無ければ、まともに文字も読めません。なので、お願いです。僕たち異界人でも学校に行けるよう……それかせめて、勉学に触れる事の出来る機会を――」
レイ 「そこで子供でも誑かして洗脳して共存派を増やそうとしているのか? ハン、如何にも妄言を吐き散らかす奇妄共の考える姑息な手段だな」
異界人「!? い、いえ、洗脳だなんて、僕そんな事は」
レイ 「いいかもう一度言ってやる。貴様らはこの町にいるのを『現状許されている』に過ぎない。町民の仲間入りをしたなどと思いあがるなよ。同類にも伝えておけ。二度と奇妄どもの指図でこの町を変えようなど考えないことだ!!」
異界人「……そんな……」
レイ 「……ああ、奇妄が居るだけで部屋が畜生臭くなる。それに周りを見ろ。貴様が見苦しく動くたび毛が飛び散っているのがわからんのか。分かったならさっさと片付けてすぐさま去ね。そして……アナタも、二度とこんな異界人を相手にマトモに取り合わなくて結構です。そんな事をしていては、この奇妄の様に自分の立場も忘れて好き勝手に暴れるだけですから。了解して頂けますね?」
職員 「す、すみません……」
レイ 「では、後を頼みます。……あぁ、その奇妄が失せるまでヒトトキも目を離さないでください。何を盗られるか分かった物ではありませんから。私は、この部屋から畜生の臭いが取れるまで別の場所にいますから」
職員 「分かりました。では、完了しましたらお呼びしますね」
レイ 「えぇ、よろしくお願いします」
-結-