台本②~ルーアン~
台本作成:森山わん太郎(@MoriyamaWantaro)
少年 「おいブス……おいってば!」
ルーアン「ひゃっ!? わー!!! やめてください! 羽引っ張っちゃイヤー!」
少年 「うっせーブース! こんな目立つモンつけてっから悪いんだよーだ!」
ルーアン「な、なんでそんなにブスブス言うんですかぁ! はっ! もしかして、私の事好きなんですか!? 好きだからいじめちゃう、みたいな事ですかー!? キャー!」
少年 「ばっ!? ばばばばばかちっげーよ!!!! だだだだ誰がこんなブス好きになるかよ! ぶ、ブース! ブース!」
ルーアン「こーら! あんまりそんな事ばっかり言ってると、他の女子諸君にも嫌われますよ? そうなった時、一番傷付くのはあなたですよ? その時になってからじゃ遅いんですからねっ?」
少年 「う、うるせーブース!」
ルーアン「あ! また言いましたねー!? ……あ」
少年 「……あ? ……な、なんだよ、急に固まって――」
少年母 「コラあんた!!! まーたランちゃんにちょっかい出して!!!!! いい加減にしな!!!!」
少年 「げっ!? かかかかあちゃん!!!? ぐっ……! こ、今度会ったら覚えてろよー!!!!?」
少年母 「まったく……ごめんよ、ランちゃん。いやだったろ?」
ルーアン「いいえ! むしろああやって一緒に遊んでくれるのって私、とっても楽しいですから! ……あ、おばさま! その大荷物……もしかして、買い物帰りですか? それなら私、お手伝いしますよ!」
少年母 「あっはっは! いいんだよ、そんな気を使わなくって! それに、女の子にこんなに重たいもの、持たせられないよ!」
ルーアン「だーいじょうぶですよー! 私、こう見えても力持ちですからね! ふんすっ!」
少年母 「そうかい? それなら少し、お願いしようかね……いっつも有難うねぇ、まったく、ウチのもランちゃんを見習ってほしいもんだけれど」
ルーアン「きっと、照れ臭くってお手伝いできないだけですよ。だって彼、この間おばさまが風邪引かれて寝込んでいた時、どうしたらおばさまの為になるかずっと考えてるいい子ですし、それに――」
少年母 「……? それに、なんだい?」
ルーアン「いえ! なんでもありませんよ、うふふ……!」
少年母「そうかい……? それならいいんだけれど……あぁ! そうだ、そういやこないだ、美味しいお餅を貰ってねぇ。良かったらちょっと持ってお行きよ! なんだったら、ウチで焼いて食べたって構わないよ」
ルーアン「え! いいいんですか!?」
少年母「いいんだよ、ランちゃんにはいつも手伝って貰ってるからね。それに、あんまりにも沢山貰っちゃったもんで、あたしらだけで食べてたんじゃカビちまいそうなんだよ。だから遠慮せずに……ね?」
ルーアン「ありがとうございます! では、お言葉に甘えて……うふふ、お餅、どうやって頂きましょう……! やっぱり、お醤油をちょっと付けて……それとも御手洗……うーん、どれも美味しそうで悩みます……!」
少年母「あっはっは! 悩みな悩みな! うんと悩んで、美味しく食べるのが一番だよ!」
八百屋「よぉ! べっぴんさんたち! 今帰りかい? 今日は……なんといい人参とごぼうが入ったんだよ。良かったら見て行くかい?」
ルーアン「あ、おじさま! こんにちは!」
八百屋「おう! こんにちは! なんだいランちゃん、随分とむつかしそーな顔してたけどよ、何か悩みかい? おっちゃんが聞いてやろうか?」
ルーアン「い、いえ! 大丈夫です!」
少年母「それがね? これからお餅を食べさせてあげようと思って、どんな風に食べたいか聞いたんだけど、それで悩んじゃってねぇ」
ルーアン「お、おばさまぁ!」
八百屋「がっはっはっは! 餅たぁ随分気前がいいねぇ! それなら一丁、おっちゃんのオススメだ。大根をすりおろして、そこに醤油をツイとかけて餅と絡めて喰って御覧。これがピリッとした中にも醤油の香ばしさとつるりとした餅の触感が――」
ルーアン「わー!? ど、どうして選択肢を増やすんですかぁ! おじさまのいじわるぅ!」
少年母「ちょっとあんた、ランちゃん余計になやんじゃったじゃないか! どうしてくれんのさ!」
八百屋「がっはっはっは! 悪く思わないでくれよ、これも商売の内なんでね! それで、どうだいこの立派な大根! 一本買っていかないか!?」
ルーアン「う、うぅ~……! ど、どうしましょう……!」
ルーアン「(――殆どの人は、私達異界人について誤解や奇異の眼を向けていますし、そのせいで辛い事だって確かにあります。でも……中にはこうして、偏見を持たずに接してくれる人が居る。私達、異界人を人として見てくれる人が居る。それが、どんなに素晴らしくて幸せな事か……私は、知っています。……私思うんです。私達はきっと分かり合える。争いのない平和な世界で、私達と人間同士が手に手を取る事だって出来るはずなんだって。だから私は――)
ルーアン「決めました!」
少年母「お! 何にするんだい?」
ルーアン「頑張って、いつか全部コンプリート! です!」
-結-