それは本当に突然の出会いだった。
当時高校生で いわゆるコンピューターオタクだった僕は、当時一般に広まりつつあったインターネットでホームページを開設し、その関係で知り合いになった友人たちと IRC といういわゆるチャットルームで夜な夜なプログラミングの話を繰り返していた。
当時音楽といえばゲーム関連にしか興味がなかったまさにオタク的な僕に IRC 仲間の @takeshinoda が「じゃあこんな曲とか好きじゃないかな」といって送ってくれたのが YMO の Rydeen の MIDI ファイルだった。
MIDI ファイル。今となっては知らない人のが多いかもしれないが、いわゆる打ち込み系の音楽のデータファイルで、MP3などと違い音楽の情報だけを持ったファイルで、コンピューター上のシンセサイザー(MIDI音源)上で再生される形式となっていたため、ファイルサイズも小さく、アナログモデムや ISDN といった低速なインターネット回線が主流だった当時は広く広まっていた。
また、当時はインターネット上の著作権がそれほど厳しくなかった為に様々な楽曲を打ち込んだ MIDI データがホームページ上で公開されており、自由にダウンロードして聴く事が出来た。
そんな中で彼が送ってくれた Rydeen の MIDI を聴いて、僕は衝撃を受けた。他の MIDI ファイルを聴きあさり、実際の音源を CD を買って聴いて更なる衝撃を受け、さらに CD を買いあさった。
楽曲はもちろんの事、YMO の事を知れば知るほど、そのスタンス、スタイルにも感銘を受けた。
テクノポップとして大成功を収めた前期、その成功を裏切るかのように自分達の音楽の可能性を追求した中期、散開を前提に開き直った様相を見せるも完成された後期。わずか 6年の活動期間ながらこれほど凝縮され、かつ確立されたコンセプトで活動していた事を知ることで更に衝撃を受けた。そして各メンバーのちょっとブラックで人を食ったような感じの人間臭さ。これらはすべて僕が生まれる前、もしくは生まれた間もない頃の活動でありながら僕を狂わせる程に魅了していった。
こんな調子で完全に YMO にハマってしまった僕は高校生当時出ていた音源を一通り買いあさり、いわゆるアルファ商法と呼ばれるレア音源をちょっとだけ混ぜたベスト版などにもまんまと引っかかりつつも、あらゆる音源を聴きまくった。各メンバーのソロ作品や、いわゆる YMOチルドレンと呼ばれる関連アーティストの作品も聴きまくっていた。(逆に YMO の呪縛に取り付かれて新しい音楽が開拓できないのではと悩んだりした。)
それから 十数年、Sketch Show や HASYMO といった活動を経て復活した YMO。僕が生まれる前に結成され、まだやっと自分でゴハンが食べられるような年齢に散開してしまった彼らのステージをまさか生で見る事が出来る日が来ようとは。彼らの出演するワールドハピネスに始めて参加したあの当時の感動は今も忘れられない。
長い年月を経た今なお新しい音楽を提供し続けてくれる彼ら。その事を本当に尊敬すると共に、勇気付けられる。
単なるファンとしてだけでなく、ある種の人生の目標として、これからも心から応援していきたい。
本当にありがとう。