むかしむかし、あるところにとても幸運な人が住んでいました。
その人は病気をすることもなく、怪我をすることもありませんでした。海に落ちても、火事に巻き込まれても、いつも無事でした。それどころか、誰も、その人に傷ひとつつけることさえできませんでした。
ある日、その人はとても不幸な人を見かけました。その不幸な人は、死にこそしなかったものの、生まれて以来ありとあらゆる不幸を被り続けてきた人でした。幸運な人は、その不幸な人をとても気の毒に思い、自らの幸運でその不幸が救えないものかと思案をはじめました。その次の瞬間、その幸運な人は死んでしまいました。
神が嫉妬深いという話でした。
(あるいは、自らの特権に気づいたものはその次の瞬間に罪を負うという寓話)